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広報・広聴

平成30年度 広報紙部門 総評

公開日:平成31年(2019)3月19日更新日:平成31年(2019)3月19日

大井委員

 メディアが偏在化する現代社会にあって、そして様ざまな広報媒体が利活用されるメディア環境にあって、紙媒体としての広報紙は今なお様々な、かつ重要な役割を担う。自治体は、文字情報として、伝えなければならない情報から、伝えておくべき情報、伝えておいた方が良い情報に至るまで、様々な情報を抱えている。それらの情報の価値・意義を吟味し、それに従った情報提供を心掛けることが大事であろう。もちろん提供すべきは単なる情報に限らない。住民の参加を促すような議論の提供も、複雑な利害が絡む問題について多角的な視点の提供も重要である。自治体の基本的な施策を理解してもらうだけではなく、支持・協力をもたらすような取り組みが必要である。

 評者は、広報パーソンとして心掛けるべきことを、仕事柄常々考えてきたが、以下そうした心構えを以下掲記してみたい。平成の幕引きが近づく今、一つの時代が終わろうとしている今、広報パーソンとして「今何をしているのか」、「今何ができないのか」を問い直す機会にでもしていただければ、という思いからである。後者の課題は優れた広報パーソンの所与となる。

 第一は、「楽しんで作ること」である。仕事であるから当然楽しいことばかりではなく、時にはつらいと思うこともあるだろう。作業が進まず時にはイライラが高じることもあるだろう。しかし、こうした思いは意外に広報紙にあらわれてしまうものである。製作者が仕事を楽しくしているか、そうではないかは「しのぶれど、色に出にけり」なのである。

 第二は、「季節感をすくい上げることの重要さ」である。日本は四季に恵まれ、その折々に様々な行事などが催される。さりげなく地域の季節感を取り入れる。広報紙を手にとって、「こんな季節になったのか」といった感慨を持って、読まれる読者も少なくなかろう。広報紙だけでなく、こうした切り口から読者を引き込んでいくことは大事な手法である。読者はいつでも読むことを止めることができる。最後まで読んでいただいてこそ、何からのリアクションを期待することができるのである。

 第三は「マンネリズムとどう立ち向かうか」である。一般にマンネリと言ってあまり良い意味には使われないが、マンネリの効用もあるのである。毎号紙面が変わってしまっては、必要な情報になかなかたどり着けず、ストレスを感じる。慣れるまで使いづらいといったことが起こるだろう。企画記事はいざ知らず、情報提供、お知らせなどのページは、高度なマンネリが必要なのである。しかし、ある種のフォーマットについてマンネリは必要だが、表現は別物である。ただ伝えればいいと思っていないだろうか。絶えず、もっといい方法があるのではと模索することが大事なのである。ここではマンネリ打破が必要なのである。

 第四は、「時代を先読みすること」である。かつて有能な広報パーソンに聞いたこんな話がある。その年の冬は、暖冬だったのか、積雪量が多かったのか、といった情報を分析して、夏はどうなるか、水不足が予想されないか、を先読みして、それに備える。「時代を先読みする」は大げさかもしれないが、常に先の展開を読むことは、広報紙にとって重要な心構えではなかろうか。今は亡き評論家の扇谷正造氏は、「ジャーナリストは時代を半歩前すすむ」ことが大事であると説いた。この半歩前の精神は、広報パーソンにとっても重要だと思われるのである。

 第五は、「広報紙の再点検」である。広報紙といえども定期刊行物である。製作にあたっているスタッフにとって、この発行のサイクルは、立ち止まって考えてみる機会を奪いがちである。校了後すぐに次号にとりかかる。なかなか「広報紙とはなにか」を改めて問い直す機会などに恵まれないかもしれない。しかし、この原理論的問題を、「広報紙はどのように利用されているか」、「一方的な紙面づくりになっていないか」、「届けるべき情報はきちんと受け止められているか」といった問題に置き換えたらどうだろうか。これらの問題は、時を置いて、吟味する必要がないだろうか。一方的な紙面づくりになっていないか、届けるべき情報はきちん、と受け止められているのか。

 第六は、「町(人)の声を拾い上げる」である。人間にとって一番興味のあるのは人間であって、とりわけ自分である。ジャーナリズムの世界ではこうした声を拾い上げた記事を「町ダネ」という。実は意外に読まれているものなのである。何かの折に、自分や周囲の人に焦点があたり、紙面に登場する。本人及び関係者にとってはこの上もない喜びなのである。広報紙の基本方針や紙面の制約もあって、この種の試みは難しいかもしれないが、コラムのようなフォーマットで扱うことは可能であろう。身近さ、親しみ易さ、読者との距離の近さは広報紙の魅力につながる。英国ジャーナリズムの父と呼ばれたダニエル・デフォー(ロビンソン・クルーソーの著者)は、ひとに影響を与える文章の基本は「楽しませること」と喝破した。

 最後になったが、仕事柄、たくさんの広報メディアに接する機会がある。そこで痛感するのは、読み比べの重要さである。他区町村の広報メディアを単に読むだけでも随分と参考になるものがあるはずである。もしあまりそうした機会がなければ、一度お試しあれ。

長岡委員

広報紙メディアの優位性を活かした様々な企画に挑戦する、クリエーティブディレクターとしての広報担当者に期待したい。

 どの応募作にも特集若しくは特集扱いの企画が設定されている。特集及び特集扱いのテーマは、地域の魅力を取り上げた情報・地域のボランティア活動情報・振り込め詐欺の防止情報・防災に係る情報等、様々な情報を取り上げている。いずれの特集も、地域や社会の「今」を写しだす鏡といえよう。編集のアプローチは、行政の様々な取組・住民と行政との協働・地域住民の活躍等を通して、啓発・啓蒙・協働等を促している。紙面表現も多くの住民が紙面に登場し、紙上を通して企画内容が住民に身近に感じるリアリティのある紙面であろう。ただ、特集に充てる頁数の制約で、企画内容を深く掘り下げた編集が少ない。企画が優れた応募作も多く、編集で悔やまれる応募紙が多く見受けられた。

 一方、施策情報及び住民生活に欠かせない紙面は、様々な支援施策及びイベント情報、子育てに係る情報・介護に係る情報・健康に係る情報等、情報が充実している。また、情報のカテゴリー別に区分タイトルと情報項目を表示し、情報を集約し整理した編集を施している。あわせて、毎号、情報を配置する紙面構成も統一化されている。住民にとって情報検索が容易に行える紙面で、住民視点に立った紙面編集が見てとれる。

 紙面表現は、かつての新聞的な文字中心の表現からビジュアルを多彩に使い冊子型のデザイン表現が大半を占めている。情報区分で紙面表現を大きく変化させ、情報のメリハリと視覚的なメリハリを強調させ、情報に目を留まらせる表現工夫を施している。見せる広報紙を意識した表現が、多くの応募作に見る事ができる。また、紙面の開き方も、縦開きから横開きである左開きの広報紙が年を追うごとに増えてきている。横開きが増えている要因は、縦組みに対して、横組みの文字組は情報量を多く掲載できるメリットある。あわせて、表組及びグラフ等の情報訴求も多く、広報紙面をすべて横組みで表現する事が多くなってきている事も挙げられよう。横開きは、視線の誘導を考慮した広報紙の開き方といえよう。住民の読む視点を考慮し、年々向上する広報紙の表現力を紙面から感じる審査であった。

 行政広報紙は、住民生活に欠かせない情報紙であり、住民と行政とを繋ぐコミュニケーションメディアとなっている。また、自治体は、WebをはじめInstagram・Twitter・Facebook・映像・ポスター・チラシ・冊子等、様々な広報メディアを活用し多くの広報活動を行っている。しかし、他の広報メディアと異なり全世帯に配布される広報紙は、住民自らメディアへのアクセス若しくは広報情報を入手しようとする行動はいらない。広報紙は、情報の入手にわずらわしさがない媒体の優位性が勝っているメディアといえよう。一方、全世帯に配布される広報紙は、様々な情報をいかに住民に紙面を読んで頂くかがキーポイントとなる。

 また、閲読効果を上げるための紙面企画及び編集と表現力の差が、広報担当者の技量の差となって表れる。ただ、昨今では、広報紙の編集及び表現の一部、または全ての制作を協力会社に委託する自治体も多い。その意味で、広報担当者のクリエーティブディレクション(制作に係る全ての現場責任者)能力が広報紙に問われている。住民の目を広報紙に集めるために、様々な企画と編集の切り口で情報を提案し、メディアの優位性を活かした広報紙が望まれる。広報担当者の更なる住民視点での挑戦に期待したい。

このページに関するお問い合わせ先

広報広聴部  広報課 
電話番号:03-5388-3087