27年度 映像部門 総評
関委員
動画があふれかえる世の中になってきました。作り手は学生、一般市民からプロまで入り乱れて。良いコンテンツを作れば思いのほか多くの人々、そして世界にまで届く。逆に力のないコンテンツは見過ごされてしまう。こんな時代の自治体発信の動画はどうあるべきか。どんな動画に人々は心惹かれるのか。そんなことを考えながら審査させていただきました。このコンクールの場合は、取り上げられたテーマ自体の魅力とその表現技術との掛け算が作品の力となって表れてくると思います。さらにはその自治体や、施策を推進した人々、出演者、映像制作者の情熱も大きく影響してきます。
今年は終戦70年にあたり、大戦の記憶を風化させないための施策とそのレポートがいくつか見られました。重要なテーマであり、関係した人たちの強い思いは見る人を惹きつけたでしょう。
2020年の東京オリンピックに向けて地域の特色を生かし新たな取り組みをスタートしていこうという、希望にあふれた作品も複数ありました。地域活性の大きなきっかけにしたいところだと思います。地域の特徴、伝統や名所に新しい光を当て若者や海外にまで発信していこうというものも多くありました。それぞれ自治体が競い合って魅力をアピールする時代の表れかもしれません。発信の仕方としてオリジナル楽曲、ダンス、地域CMのコンテストやメイキングなど多様化しているのも今年の特徴でした。全国的にも地方活性化や観光誘致のための面白動画が話題になったことも影響しているかもしれません。そのほか、自治体として住民にぜひ知っておいていたたきたい施策の成果、情報など。形式はレギュラーニュース、特集映像、プロモーション映像といろいろでしたが、地域で独自のテーマを選んだ力作がそろいました。
テーマはそれぞれですが、同じテーマでも、作り手の工夫で見え方はグッと変わってきます。せっかくのテーマが、おざなりな映像制作で魅力的に見えなくなってしまうことも当然あります。
制作にかかわる方は、価値あるテーマをしっかり視聴者に伝えるための工夫と情熱をもって取り組んでいただきたいと思います。満足いく作品ができたときの喜びは格別ですから。
髙橋委員
今年度の応募19作品を拝見しました。毎年毎年作品のレベルアップが続いていますが、今年度も期待に違わぬレベルの高い作品が並んでおり、個性豊かでバラエティにも富んでいて、楽しみながら各番組を見させていただきました。
その様な粒揃いの作品ばかりですので採点評価は大変難しく、見方を変えれば欠点が長所に、長所が欠点になる可能性もあり、いつもより更に慎重に採点したつもりですがどうでしょうか。
各自治体の個性もはっきりしてきました。それは広報番組づくりの謂わば「インフラ」が行き渡り、全体の技術レベルが確実に高まってきた証左だと思います。
あと、番組の出来を大きく左右するのは制作側の気持ちだけです。どうしてもこれだけは伝えたいという制作者の熱意、情熱が無ければ気の抜けたビールのようなものになってしまいます。改めて皆さまにエールを送りたいと思います。
各番組の傾向としては、平成27年が戦後70年ということから、各地域ごとの眼からあの「戦争」を改めて見つめ直してみる、という企画と、地域に伝承されている歴史遺産、文化・風俗をもう一度見直し、若い世代に伝えていこう、という二つの潮流があるように感じました。
前者の代表は墨田区の「戦後70年今、伝えること~平和への誓いと願い~」です。墨田区は昭和20年3月の東京大空襲で3万人もの犠牲者を出しました。戦後70年、当時を語る語り部たちもめっきり少なくなってきました。番組では、改めて鎮魂と不戦を誓う区民たちの姿をはっきりと浮かび上がらせるのに成功しています。
後者の代表は新宿区の「染の小道2015 落合・中井を染め物で埋め尽くす!」というタイトルの作品です。大正時代から染め物の街として知られていた同地域が如何にして当時の活況を取り戻し、日本や世界に染め物文化を発信していくまでになったのか、番組を見ると一目で分かります。
今回、両作品や他の作品にも共通して言えるのは、「協働」という概念でしょうか、地域住民が主体となって、行政や事業者と手を取り合い、街づくりや街の活性化、イベントの実施などを率先して牽引していく姿です。少し前まではこのような地域住民の動きはまだまだ少数派でしたが、いまは立派に多数派であり主流です。このような動きを創り出した底流に、各地域の広報番組が一役も二役もかんでいると思えるのは非常に喜ばしいことです。
このページに関するお問い合わせ先
広報広聴部 広報課
電話番号:03-5388-3087