【入門編】

1 ワーク・ライフ・バランスとは何ですか?

 ワーク・ライフ・バランスとは、人それぞれの希望に応じて、「仕事」と、子育てや親の介護、地域活動等の「仕事以外の生活」の調和がはかれる状態をいいます。望ましいバランスは、人によっても違いますし、青年期・子育て期・中高年期といったライフステージによっても変化します。ワーク・ライフ・バランスの実現のためには、これまでの働き方を見直すことがポイントになります。ワーク・ライフ・バランスが実現すれば、個人は、より充実した生活をおくり、成長しながら働くことができ、企業は、社員の力を十分に引き出して、持続的に発展することができ、社会全体にも活力が生まれます。

≪詳しくはワーク・ライフ・バランス実践プログラム「1ワーク・ライフ・バランスってなに?」参照≫

2 ワーク・ライフ・バランスはいつ・どこで始まったのですか?

 1990年代にアメリカ・イギリスなどで、不況期において女性や多様な人材の確保のため、社員の働きやすさと生産性の向上を両立させる方策として考え出されました。日本ではここ5~6年で企業・国・自治体の間に広まり、2007年には内閣府が中心となって「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針」を制定しました。

3 ワーク・ライフ・バランスって具体的にどのような取組があるのですか?

企業の取組としては、

○育児・介護休業や看護休暇などの「休暇・休業制度」の整備

○残業抑制策や短時間勤務制度、フレックスタイム制度などの「働く時間の見直し」

○在宅勤務などの「働く場所の見直し」

○結婚・出産で退職した女性の再雇用やパート等から正社員への転換制度等の「働くスタイルを選択できる制度」の整備

○結婚・出産等のライフイベントを考慮に入れたキャリア目標設定、研修・情報提供・ロールモデルの提示等の「キャリア・ライフプランニング支援」

○保育サービス費用補助・事業所内保育所整備、自己啓発費用補助などの「経済的支援等」

があります。

≪詳しくはワーク・ライフ・バランス実践プログラム「参考資料 1ワーク・ライフ・バランス施策一覧」参照≫

4 なぜワーク・ライフ・バランスが必要なのですか?

 少子高齢化が進み、人口が減少していけば、これまで以上に、仕事と仕事以外の役割(子育て・介護、地域活動等)を担う必要のある人が増えていきます。労働人口も減少しますので、企業としても、女性や高齢者などをもっと活用する必要があります。また、消費者ニーズの多様化や社会経済情勢の変化のスピードが速くなる中で、企業は、多様な人材を活用し、こうした変化に対応していく必要にも迫られています。仕事以外の役割を抱える多様な人材を活用するためには、企業における働き方を見直し、多様な働き方を可能とする必要があるのです。

5 そもそもワークとライフの「バランス」って何ですか?

 「バランス」とは、仕事と生活の時間的なバランスだけを指すのではありません。また、仕事と生活の割合が5:5になることを目指しているのでもありません。仕事を一生懸命頑張りたい人や、家族との時間を大切にしたい人など、人によって何が重要であるかは異なります。各自が希望する形でそのバランスを決められることが重要です。

6 ワーク・ライフ・バランスを推進すると私たち一人ひとりにも何か良いことがありますか?

 ワーク・ライフ・バランスが実現すると、自分の望むバランスで仕事と仕事以外の生活に取り組むことができます。子供と過ごす時間が増えたり、地域活動や趣味、自己啓発等に取り組むことができたりすることで、仕事以外の生活の満足度がアップし、日々の生活が充実します。さらに生活にメリハリがつくことで、仕事に対するモチベーションも向上するといった好循環を生み出します。

7 ワーク・ライフ・バランスとは、仕事ばかりしてはいけないという意味ですか?

 ワーク・ライフ・バランスとは、仕事ばかりしてはいけないという意味ではありません。

 その人によって希望する生活スタイルは異なりますし、仕事を頑張りたい時期、出産や子育てに比重を置きたい時期、介護を行う必要がある時期など、ライフステージによって何が大切かは変化するものです。「今は何よりも仕事を頑張りたい」と思い、頑張っている人を否定するものではありません。各自が希望するバランスで仕事と仕事以外の生活に取り組むことができる社会にすることが重要です。

8 残業しないで早く帰ることがワーク・ライフ・バランス(の目的)ですか?

 ワーク・ライフ・バランスは、残業しないことが目的ではありません。「仕事中心」のライフスタイルもあるでしょう。急ぎの用件でやむを得ない残業の場合もあります。しかし、恒常的な長時間労働は、心身に悪影響を与え生産性を低下させます。なぜ残業が続くのか原因を見極め、効率的に働くための取組を進めることも必要です。会社が職場環境の見直しを行うとともに、社員一人ひとりもタイム・マネジメントのスキルを身につけて、メリハリをつけ効率よく仕事をすることは、仕事中心の生活をしたい人にとっても、仕事以外の生活を充実させたい人にとっても、ワーク・ライフ・バランスをはかる前提として重要なことです。その結果、時間生産性が高まり残業が減ることにつながります。

9 ワーク・ライフ・バランスを実現させると、仕事がおろそかになってしまうのではないか心配です。

 仕事以外の生活も大切にしようとすると、仕事ができる時間に自ずと制約ができます。時間制約があるからこそ、効率よく働く必要が生じ、逆に仕事の生産性が上がっている人もたくさんいます。ワーク・ライフ・バランスは、仕事以外の生活のために仕事をおろそかにしてもいいということではなく、仕事も仕事以外の生活もきちんと責任を果たすための方策なのです。

 また、仕事において高い生産性をあげるためには、様々な知識やスキルが必要です。それは仕事以外の場で身につくことも多いのではないでしょうか。育児休業から復帰した社員が、育児経験を通じて時間の使い方がとても上手になったという例もあります。仕事以外のことを経験することで創造力が高まるとともに、リフレッシュすることで仕事への意欲も高まるなど、仕事に対しても好影響を与えます。人事コストをかけず高い生産性を確保する。ワーク・ライフ・バランスにはそんな相乗効果が期待できます。

10 ワーク・ライフ・バランスは女性のためのものですか?あるいは子育て中の人のためのものですか?

ワーク・ライフ・バランスは女性のためだけのものではありません。

子育て期の男性はもちろん、親の介護をする必要がある人、将来に向けて自己啓発の学習に取り組みたい人、地域の活動に参加したい人、社内外のネットワークを広げたい人など、老若男女を問わず、様々な人がワーク・ライフ・バランスをはかるために働き方を見直したいと考えています。

また、女性を活用することはこれからの企業・社会には不可欠ですが、そのためには男性の働き方も変えていく必要があります。男性が恒常的に残業をしている組織では、残業ができないというだけで、一人前に働いていると認めてもらえないという雰囲気が醸成されがちです。そうした環境では、女性は、子育て期を乗りきれませんし、キャリアアップをしようという意欲が低下してしまいます。さらに、共働きの女性が安心して働くためには、子育てに夫も積極的に関わっていく必要があります。夫が保育園のお迎えや子供の病気時の対応などに、まったく関われない状態では、共働きの女性が仕事をする上で受ける制約が大きなものになってしまいます。

11 ワーク・ライフ・バランスの目的は少子化対策ですか?

 ワーク・ライフ・バランスは少子化対策が直接の目的ではありません。

 日本のワーク・ライフ・バランスは少子化対策として語られることが多々ありますが、本来の目的は働き方を変えることで、様々な人が希望する働き方を実現できる社会にしていくことです。希望する働き方を実現できる社会とは、経済的に自立でき、出産後も働き続ける選択肢のある社会でもあるので、ワーク・ライフ・バランス実現の結果として少子化が改善されることは期待できます。

12 非正規社員にもワーク・ライフ・バランスは関係ありますか?

 ワーク・ライフ・バランスは正社員・非正規社員を働く人、働きたい人すべてが対象です。

 近年の若年者等における正社員以外の労働者の大幅な増加により、経済的自立が困難な人が多く、結婚や子育てなど将来に関する人々の希望を実現しにくい社会になっています。ワーク・ライフ・バランスを推進することで社会環境を改善し、就労による経済的自立の実現を目指します。

≪参考:若年者等における正社員以外の増加(内閣府HPにリンク)≫

13 ワーク・ライフ・バランスは、政府や自治体が取り組めば良いのでは?

 確かに少子化に対する危機感やそれに伴う将来的な労働力不足解消への対応策として、政府や自治体がワーク・ライフ・バランス推進の大きな流れを生み出してきました。しかし、ワーク・ライフ・バランスは、政府や自治体の働きかけだけでは実現できません。ワーク・ライフ・バランスは、一人ひとりが充実した生活を送れる社会の実現のために必要なものであり、会社や社員それぞれがメリットを意識しながら取り組み初めて実現するものです。

14 ワーク・ライフ・バランス推進のために行政は何をやっているのですか?

 行政は、助成金の給付やセミナーの開催、キャンペーンによる普及等ワーク・ライフ・バランス推進に関する様々な取組を行っています。詳しくは支援情報のページやセミナー等情報のページをご覧ください。

15 「ワーク・ライフ・バランスは、育児・介護対策、残業削減対策、多様性の確保(ダイバーシティ政策)=外国人、障害者、高齢者、女性の採用・登用」という視点で語られることが多いようですが、それ以外の視点はありますか。

ワーク・ライフ・バランスには、優秀な人材の確保や定着、社員の意欲向上、メンタル不全の防止などの視点もあります。

残業削減や有給休暇取得促進のほか、在宅勤務やサテライトオフィスなどにより働く場所に柔軟性を、短時間勤務などにより働く時間に柔軟性を持たせることで、多様な働き方が推進されると、社員が希望する働き方を選択できるようになります。働きやすい会社として優秀な人材の確保や定着、社員の意欲向上につながったり、職場環境の改善によりストレス低下を図り、メンタル不全の予防に活かしている事例があります。

監修:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

矢島洋子氏、塚田聡氏

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